今は昔、一条帝の御世。

堀川西の邸に「一条の橋姫」と呼ばれる姫がいた。
夜な夜な橋の上で笛を奏でては、現世に彷徨う魂を彼の岸へ誘うことから、この通り名が付いたという。
彼女の通り名はもう一つ。

「安倍の月姫」

幼少の折、邸の主である老人に拾われたという話を聞き付けてそのように呼ぶ者もいた。

実は老人本人も大層な有名人だったりする。
「勝手に戸が開いた」だの「妙な音が聞こえる」だの邸そのものが噂されることもある。

とかく話題に事欠かないこの界隈。
今宵も戻橋を訪うヒトの姿が。

世に妖し奇しの多けれど、げに恐ろしきはヒトの闇。

人物紹介


小しの/颯太
こしの/そうた 16歳
探し物を求めてふらふらしていた先で明加里と出会う。
武士の子ではあるが、女田楽の一座に母子で拾われ、女子として育つ。
「颯太」は幼名。
いつの間にやら安倍家に振り回されることに。

安倍明加里
あべのあかり 15歳
赤ん坊の頃、竹藪でじじ様に拾われたことから「安倍の月姫」と呼ばれる姫。
見鬼の力があるので、じじ様のお仕事の手伝いをしたり、戻橋から彼の岸のモノが出ないよう、橋守を勤めている。
笛の音でアヤカシを鎮める事が出来る。
いつでも笑顔だけれど、本当は淋しがり屋。

やっくん
やっくん
やっくんは、やっくん以外の何者でもない。
明加里を明姫と呼ぶ茶飲み友達。
周りの人間に尽く「やっくん」と呼ばせる。
本人曰く「謎の仕置き人」だとかなんとか。

青龍・朱雀
せいりゅう・すざく
じじ様の式神。十二星将の内、青龍、朱雀。
明加里には専ら「セイちゃん」「スーちゃん」と呼ばれている兄的存在。
本来の姿だと大きすぎて邸に入れない為、普段はぬいぐるみのような姿をとっている。

藤原道長
ふじわらのみちなが 29歳
内覧の宣旨を受けた藤家の貴族。
悪い人ではないが、良い人でもない。
明加里を側室に狙っているらしいとの噂が。
何処からともなく現れて、美味しいトコ取りしていくような人。

大姫
おおひめ 8歳
藤原道長の一の姫・藤原彰子(ふじわらのあきらこ)。
年齢の割に賢く、侮れない。
明加里には「お姉様」になって貰いたいらしい

紫・桜
ゆかり・さくら
じじ様の式神。十二星将の内、太裳、六合。
明加里の身の回りのお世話をしているお姉さん達。
紫は出来る女房姿、桜は唐風の装束を身に纏っている。
安倍家のイアツ系といやし系。

じじ様
じじさま 74歳
高名な陰陽師・安倍晴明(あべのはるあき)。明加里を優しく温かく、時に生温く見守る。
酒が入ると「僕も昔はちょっとしたモノだったんだよ♡」が口癖。
しかし〝ちょっとした〟当時の彼を知る者が皆無の為、真実は闇の中。
その他、数々の噂話を敢えてほったらかす等、抜け目ないおおらかな一面も。