むかしむかしのそのまたむかし
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少しは住み易いように草を除けたり、薬草を摘みに行ってみたり、骨を見つけたら埋葬したり…そんな風にこの土地での生活を始めてみました。
戦禍から逃れてきた人がやってきました。
怪我が癒えるまでお世話をしてあげると、御礼にと、家…とまではいきませんが、小屋のようなものを建ててくれました。
傷付いた兵士がやってきました。
その人は日生達の顔を見て人心地ついたのか、そのまま息絶えてしまったので、加夜古が夜見ノ国へ導いてあげました。
豊成と怪我が治った人とでお墓を作ってあげました。
戦に敗れ、連れて行かれた土地から逃げてきた人達がやってきました。
休ませてあげると、御礼にと、ご飯を作ったり、晴海と美苑の面倒を見てくれました。
小さい子供もいたので、二人にとってはいい遊び相手です。
その後も、傷付いた兵士や戦禍から逃れてきた人達がやってきました。
一度この地に訪れた人は、居心地がいいのかそのまま住み着いてしまうので、いつのまにか村一つ分の人数が集まってしまいました。
「見つかりにくい筈じゃなかったのか…?」
日生が眉間に皺を寄せて豊成に詰め寄りました。
豊成はそれを見なかった事にして、笑いながらその場を後にしました。
その後ろ姿を見送りつつ、日生は溜め息を吐きました。
小川の側では、元気を取り戻したおばさん達がおしゃべりをしながら洗い物をしています。
大きな木の下では、晴海と美苑を含めた幼い子供達がもう少し年上のお兄さんお姉さん達と一緒に遊んでいます。
村の中ほどでは、年頃の男の人が総出で家を作り、その近くで年頃の娘さんが男の人達への食事を用意しています。
こうやって見ていると、晴海や美苑の「お友達」ができるのもそう遠くない気がします。
戦はもうこりごりだという人達で暮らしているので、毎日穏やかに生活しているのですが、日生は不安が拭えませんでした。
いつ、他の部族に見つかってしまうかわかりません。
もしかしたら、日生の親族に見つかってしまうかもしれません。
その時、自分はどうするのだろう。
剣を手に、戦うことになるのだろうか。
そうすれば、人の良い村の男達は共に戦うと言うだろう。
やっとの思いで戦から逃れた人々をまた巻き込むのか。
――あぁ、考えたくない。今の生活を壊したくない、いつまでもこのままで。
この村も、日生の守りたいものに含まれるようになりました。